【2006年2月8日(水)19:00~ 第1561回定期公演/サントリーホール】
●モーツァルト:Pf協奏曲第23番イ長調 K. 488 →ラルス・フォークト(Pf) ●ブルックナー:交響曲第3番ニ短調(第1稿) 久しぶりにN響B定期へ突撃です。 全日空ホテルと森ビルから吹き降ろしてくる暴風にぶるぶる震えながら当日券窓口に二時間並びますが、こうでもしないと聴けないなんて最低ですよ。どうしてN響はサントリーの定期にまともな当日券枠を設けなかったんだろう!(...「売り切れ」のくせに大いに目立つ空席、それに「惰性なんじゃよ儂ぁーだから寝るぞぃー」みたいな定期会員サマのなんとまあ多くいらっしゃること。ぶつぶつ。) 二月の定期には名誉指揮者のブロムシュテットが客演。 先々週のA定期(ブラームスのVn協奏曲と第1)はFMの中継で聴いたし、実は先週のC定期(モーツァルトの第34番と大ハ短調ミサ)はNHKホールまで聴きに行ってるんですが、何かとてつもなくすごい演奏が展開されているのはわかるものの、その理由がどうしても掴めないので感想は書かずにきたし、他の方の書かれた感想もあえて読まずにきました。 それで今日の演奏を聴いてブロムシュテットの秘術がわかったかというと、やっぱりわからない。この指揮者のやっていることは安易な比喩とは正反対のところにあるのだろうなあ…ということがぼんやりと理解できたくらいです。いつも卑近なたとえ話でお茶を濁している人間には難しいわけだ(^_^;) 軽くいきます。 前半は、今や大人気の若手ピアニスト、フォークトのソロを初めて聴くことができました。自由に歌ってテンポを揺らすし、第2楽章のシチリアーナなどでは独特のもったりとした優雅なレガートが特徴的。いいですね!清楚に引き締まって響くオケと併せて(2ndVnがすばらしい)、久しぶりにモダンでいいモーツァルトを聴いたなあという満足感。 後半のブル3は、通常よく演奏される第3稿ではなく、第3稿よりずっと長くて、しかもワーグナーからの引用がそのまま残っている(らしい)第1稿での演奏。 …んんん!N響の音がいつもと違う!ブロムシュテットの練習はかなり厳しいという噂を耳にしていましたが、今日の公演では「一箇所へ向けて迸り出る音」の「発音のタイミング・質・量を統一すること」が、基本中の基本ながら最高に重要だということに改めて気づかされましたですよ。このタイトで清純な響きは地道で愚直な作業から生まれているんだろうなあ。。速めのインテンポがよく揃っていたのもきつい練習の成果でしょう。 さらに、ブロムシュテットがやっている面白いことのひとつが、Vnを対抗配置にするだけじゃなく、1stと2ndの人数を同じにすることなんですよね。2ndのみなさんの大きなアクションは常ならぬ様子で、気合入りまくり。僕は今日Pブロックに座ったんですが、2ndとVaのf字孔がこちらを向いているせいなのか、内声がびゅんびゅん飛んできてものすごく面白いことになりました。第4楽章の冒頭など、響きの煉瓦がパートごとに積み重なっていく様子がまるで目に見えるように聴こえてきましたですよ(変な表現ですが)。 オンとオフ、ppとffとを瞬時に交替させる技術がブルックナーでは絶対に必要ですけど、今回はそうした当たり前がけっしてなおざりにされておらず、むしろ高い完成度で提示されていました。当たり前をそのままにしないのがこの指揮者のすごいところなんだろうなあ。ここ何年かのN響定期の中ではもっとも充実した演奏のひとつだったと思います。 (*文章のテンションは低めですが、とても満ち足りた気分です。この人は、そういう感動を与えることができる指揮者なのだろう。) * * * * * * 伊福部昭氏が亡くなられたそうです。つい今しがたニュースサイトで知りました(こちら)。 巨星堕つとはこのことか…。合掌。
by Sonnenfleck
| 2006-02-09 01:25
| 演奏会聴き語り
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Comments(8)
こんばんは。
最近のブロムシュテットには色々と賛否両論があるようですが、 何と申せばよろしいでしょう、私はあの手堅さに強く惹かれます。 >「一箇所へ向けて迸り出る音」の「発音のタイミング・質・量を統一すること 私はC定期を聴いたのですが、 これが出来た時のN響の水準の高さを感じました。 まだまだ捨てたもんじゃない!(と書いたら怒られそうですが…。) >とても満ち足りた気分 そうなのですよね。 ああ聴いて良かったなと「素直」に思わせてくれる指揮者の一人です。 この「素直」な音楽の喜びというのも、時に必要なのかなと思います。 >当日券窓口に二時間並びます す、スゴいです…。 学生の頃私も突撃(数多く玉砕経験もあり。)しましたが、そこまでは…。 それにしてもB定期って、中へ入ると時に拍子抜けするほど空いてますよね。 本当に聴きたい方に券が行き届いていないのかなあと、 ガックリさせられます。
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今日も噂に聞く「非公式当日券」が出ていたんですね。しかし2時間ですか・・・きっと、本当に音楽を愛する人だけが並んでいたんでしょう。N響はB定期の定期会員席をAorC定期に振り返る制度を作った方がいいような気がします。それなら少しでも空席を減らせるし、当日券枠が増えればN響も儲かりますしね。
対向配置をPブロックで聴くというのは興味をそそられました。よい演奏だったようなので、テレビ放送を心待ちにしています。
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Sonnenfleck at 2006-02-10 00:37
>はろるどさん
個人的に、最近のN響は他の在京オケに比べて覇気のない演奏の割合が高くなってきている気がしているのですが(他の水準が大幅に上がってきているのだとも思います)、今回ブロムシュテットが振った定期はすべて文句のつけようがない出来で、まさに「素直」にいい演奏だなあと思えるものばかりでした。(でも、いま一番リハーサルを覗いてみたい指揮者はブロムシュテットなんですよね。いったいどんなことをしているのか知りたい…) 今回はどうしても聴いてみたかったので、なんとか...かんとか...都合をつけて早めに並ぶことができました(^^;) 私も玉砕経験があるので、こればかりは万全を期します(笑)
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Sonnenfleck at 2006-02-10 00:40
>preludeさん
そうなんです。もしかするとあまり大きな声で話してはいけないことなのかもしれないのですが、、まだN響B定期にも「並べば買える肉弾戦」の余地が残っているんですよね。ど~ぅしても気になる公演のときは並んでしまいます。 B定期の振り替え、まったく同感です。もともとB定期はAやCに比べてマニアックな、名曲コンサート路線ではないシリーズとして企画されたという話を聞きましたが、見たところ聴衆がすさまじく保守化している現在のB定期はまったくその意味を果たしていないと思います。来シーズンはB定期にノリントンが客演するらしいですが、客席との距離が心配でなりません。。 サントリーのP席は一般にイメージされているほど悪くはないと感じています。私も正面からの映像が見たいので、放送が楽しみです◎
こんにちは。このコンサート、隠れ当日券があったんですね。行きたかったけど早々に全席売れ切れになってて、当日サントリーHのサイトも確認したんですが、やっぱり当日券なし。とはいえ、知っててもそんな肉弾戦に勝利するのはムリでした。N響B定期は本当に人気高いですよね。全部サントリーでやってくれんかなあ(笑)。
テレビでブラームス・プロのほうを見ましたが、すばらしかったです。あのコンサートマスター常駐してくれんかなあ、とか。
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Sonnenfleck at 2006-02-10 23:00
>iioさん
はじめまして!毎日ブログ拝見しております◎ B定期の日の当日券窓口には、「撮影用機材等のスペースのために売りに出していない席が開放可能であるが、一切売れない場合もある云々」という張り紙がしてあるのですが、実際に売られる10枚程度のチケットはランクも場所もさまざまなので…裏ではいろいろなオトナの事情がからんでいそうです。 とはいえ、いまだにこういう愚直な方法が有効であるというその点に、なんだかわけもなくうれしくなってしまうのでした(笑) 外部のコンマスさん登用は指揮者の要求だったのか(彼はドレスデン・シュターツカペレの元コンマスらしいので、ブロムシュテットとも親しいのかもしれません)、結局よくわかりませんでしたが、ブラームスのソロは絶品でしたね。日本のオケにはどうして日本人しかいないのか、いつも不思議に思っています。
なるほどー、そういう仕組みでしたか。ワタシは吹きさらしに2時間立ってたら翌日以降体調崩して大変なことになりそうなのでムリだけど、10歳若かったらチャレンジしてたかも(笑)。
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Sonnenfleck at 2006-02-11 02:02
>iioさん
寒さで手がかじかむくらいなら我慢できますが、やはり腰が痛くなって辛かったですね。。半年くらい前までは当日券窓口の前のベンチに座って待つことができたんですが、いつのまにかベンチが撤去されてしまっていてショックでした。誰かあそこで寝泊りでもしたんでしょうか(ちょうど屋根もありますし^^;)。
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