夏の中華ネタ祭り・番外編にエントリ。
香港にHUGOというレーベルがありますが、サイト(ただし本家サイトは行方不明。これはHUGOの北米部門・HUGO Media Groupのサイトです)にはすでに載っていないアイテムが本日の一枚。麥家樂 (Mak Ka Lok)/ロシア・フィルによる、《春の祭典》+プロコ第7の録音であります(93年/モスクワ放送第5スタジオ)。 正教教会のトンガリ屋根と、謎の香港人指揮者・麥家樂、そして赤いチューリップと青空がブレンドされたジャケット。そしてオール中国語の帯には「春之祭・粗野凶暴」の文字が躍ります(帯文化はアジア的には普遍なのか/ここまで書かれたら聴かざるべからず)。 史特拉汶斯基的《春之祭》~第一部分〈大地的禮拝〉。 しかしまあこれが...気分のムラと思いつきとダルな部分が渾然一体としたヘンテコ演奏なのであります。 序曲と〈春天的預兆-少男少女之舞〉まではやる気がない。あの中国人指揮者、時間どおりに始めちゃったわ…どうするよ同志イヴァン・イヴァーナヴィチ?的な朝10時テンションなのです。そんな感じでアクセントつける気ゼロのVnたちの平板っぷりに思わず笑ってしまうんですが、それもここまで。 〈春天的輪舞〉の後半で突如、銅鑼と金管が恐ろしいほどのタメを作ると、〈敵對部族的競技〉と〈智叟的行進〉で爆発的に音響が拡大しちゃうんですな。しかし案の定、全然整理されておらず、特に後者ではてんで各自が強奏するもんだからうるさいうるさい。。なんだこれ(笑) きっとお昼ごはんを挟んで、第二部分〈祀獻〉。 またテンション下がってますね。食べ過ぎて眠いんだろうか。ついには音程すら適当になってきて序曲は実に気持ち悪い。。そして〈當選少女的讃美〉と〈祖先的儀式〉で思い出したように突然爆発するのはもう読めてます。なんといいかげんな^^;; 最後の〈祀獻大舞-當選少女〉は、、機長が限界一杯まで速度を落としてるのに、それでもオケはほとんど空中分解し燃え尽きながらシェレメーチエヴォ国際空港に滑り込み~。 「粗野凶暴」の看板に偽りなし。しかし麥家樂氏はこれでよかったのか。 * * * 併録の普羅高菲夫的《第七交響曲》は、ある程度集中した普通の演奏です。つまらない(笑) しかしこのCDのあと、石叔誠+陳佐湟/中国中央交響楽団による《黄河鋼琴協奏曲》を聴くと、ああロシアはあれでもまだヨーロッパなのだということに気づかされるのでありました。 * * * さてエリーザベト・シュヴァルツコップ死去。90歳の大往生ということです。 多くのファンにとって彼女は元帥夫人であり、また彼女自身もあの役をレパートリーの中心に据えていたのでしょうけど、僕が個人的にもっとも慣れ親しんだ彼女の歌唱は《ホフマン物語》のジュリエッタなのであります(クリュイタンス/パリ音楽院管)。欲望に溺れる高慢な高級娼婦が、シュヴァルツコップの(いささか険のある)透き通った声によって、まさに手の届かない高貴な存在になるんですよ。…合掌。
by Sonnenfleck
| 2006-08-05 23:55
| パンケーキ(20)
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Comments(13)
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iustitia
at 2006-08-06 00:51
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HUGOのCDは、劉文金の二胡協奏曲などが収録された盤を一枚だけ持っています。
先日は、劉文金の楽譜(HUGOのCDとほぼ同じ曲目)を安く見つけたので、買ってしまいました(笑) http://www.dangdang.com/product/9177/9177298.shtml
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Sonnenfleck at 2006-08-06 01:14
>iustitiaさん
個人的には伝統楽器のコンチェルトって買うのにものすごく勇気がいるんですが、二胡の音は西洋楽器のアンサンブルにも案外抵抗なく溶け込みますよね。しかし楽譜とは…毎度のことながら恐れ入りました。
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yurikamome122 at 2006-08-06 11:04
これはほとんどキワモノの世界でしょうか?。私はその麥家樂さんと中国中央交響楽団の「黄河」をもっていますがこれは演奏自体気が抜けていますがわりと整理されていましたよ。ただ曲が。。。。
シュワルツコップは残念でした。インタビューする機会がもしもあったなら、訊いてみたいことは山ほどあったのに。 ご冥福を祈りたいです。
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Sonnenfleck at 2006-08-06 11:34
>yurikamome122さん
キワモノです(笑) 実は中華ネタ祭りは《黄河》について書こうかと思っていたんですが、久々に聴いてみて…あまりにも身も蓋もない曲調なのでエントリ断念という経緯がありました。。なんと言いますか、親しみやすい泡沫的な旋律が次から次へと押し寄せてくるだけで、協奏曲としてまとまっている意味が見出せないんですよね。《黄河》組曲とかにすればよかったのになと思います。 シュヴァルツコップ、まさにレコードの裏も表も知り尽くし、20世紀演奏史の証人たり得る人でしたね。合掌であります。
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dr-enkaizan at 2006-08-07 03:09
毎度です中華物で、政治の指導で共同製作というような、作者不祥な文革期では「黄河」よりもバレー「白毛女」とかのメロディアスなのがお勧めですし、フリップスが録音にある小澤の演奏した草原の姉妹の、伝統楽器の中華ノベンバー振りも念頭にあったのですが・・・・やはりシノワに絞りました・・・(笑)。
もっと凄まじいのは厨房の頃にBCLでの北京放送のプロパガンダ管弦楽曲であり、機関車の題材での中華パシフィック231みたいな楽曲があり、流石に題名は失念しましたが・・・・・最後のきめはあの「東方紅」が堂々と、大体の曲には必ずでてきます。しかし将軍様より重厚で確かな作りなのが、侮れない文化の深さを感じました。
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Sonnenfleck at 2006-08-07 21:04
>ドクター円海山さん
文革期って「個人の名前が出るのはケシカラン!」ということで作曲家がグループを組まされているのですよね。今から考えたらただの笑い話ですけど…いやはや。しかし中華ノヴェンバーと中華パシフィック231には非常にそそられますね。。 以前から、将軍様の国のオケは意外に巧いのではないかという悪い妄想を繰り広げています。NAXOSから(「英国弦楽小曲集」と同じノリで)かの国の小品集が出たりしたら、、興味を抑えられる自信がありません^^;
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dr-enkaizan at 2006-08-07 21:55
毎度ですたしかにピョンヤン放送や突撃隊放送系を聴いていると、曲自体は頭が汚染されそうな勢いでプロパガン打されますが・・・・。
たしかに美味い瞬間がありますね・・・問題は楽器がお粗末みたいですが・・・。 イ・ユサンの楽曲を政治的理由でカメラータに録音もしています・・・このさいナクソスに対抗して廉価名曲録音レーベルで外貨を稼ぐことを見出したらどんなにアジアの平和に役立つのですが・・・・なんともいやはや。
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Sonnenfleck at 2006-08-07 23:21
>ドクター円海山さん
カメラータの件の録音は有名ですよね~。さすがに地雷かと思われて手を出してはおりませんが、破れかぶれで突撃する《1812年》とか聴いてみたいものです(ノンポリのクラヲタにのみ許される不真面目発言ですが)。
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dr-enkaizan at 2006-08-08 01:48
いいですね!!!
突撃する《1812年》 とうぜんあの「ソ連の改悪版」にてですね。(笑) もう軍事恐喝より・・・ミューズメントや文化で売り出すわけにはいきそうにないですが・・・あの国のキャラは滅ぼすより・・それを残してよい方向へ改心してほしいような、ノンセクトラディカルなこといってみたりします(笑)
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iustitia
at 2006-08-08 21:08
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カメラータの録音よりも、"Isang Yun Ensemble Pyongyang"のWERGOの録音のほうがいいですよ。ソプラノの리향숙がなかなかうまいです。
http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=412517 http://www.wergo.de/shop/de_DE/3/show,93688.html
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Sonnenfleck at 2006-08-08 23:58
>ドクター円海山さん
ですね(笑) かの国のキャラクタはたとえ指導者が変わろうとも簡単には変化しなそうですが…極寒のソ連版《1812年》から最後はアリランの挿入で華々しく飾ってみるのもよいかもしれません(これくらいにしておきます;;)
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Sonnenfleck at 2006-08-09 00:05
>iustitiaさん
WERGOにも録音があるんですか!カメラータ・トウキョウのほうは確か国立交響楽団が演奏していたような気がしますが、こちらは室内楽曲集なんですね。比較的安いみたいですし、、買ってみようか…
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dr-enkaizan at 2006-08-11 00:22
iustitia 毎度!!どうも恐縮です
そうですかWERGO録音の評判は話に聞いていたですが・・これは買いのリストに確実に入りました(笑)そおいえば忙しくて音盤屋に行ってない。密林であるか調べてみまする。 Sonnenfleck様 >連版《1812年》から最後はアリランの挿入で そして最後は将軍様マンセーが男声合唱で歌われ、ミサイルの射出音で・・・以下自粛。 やはり貴重なキャラですから・・・・・・悪いところはさっさと自粛して、キューバのような共産なのにノスタルジアなアミューズメント国家になれば、ディズニーランドの一千倍は面白いかもしれません・・・・・・。
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