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ゼンマイ仕掛けの時計職人

c0060659_20261329.jpg【Zig-Zag Territoires/ZZT 060901】
●《ボレロ》
●《亡き王女のためのパヴァーヌ》
●左手のためのPf協奏曲
→クレール・シュヴァリエ(Pf;1905年エラール製)
●《スペイン狂詩曲》
●《ラ・ヴァルス》
⇒インマゼール/オーケストラ・アニマ・エテルナ

この秋もっとも楽しみにしていた新譜、インマゼールのラヴェルがついに登場しました。
美しい白のディジパックと明るい臙脂色のディスク。Zig-ZagとAlphaはフランスの至宝だな。。
この録音がとにかく画期的なのは、アニマ・エテルナの使用している楽器がすべて19世紀末~20世紀初頭にかけて製作されたものであるという点。弦楽器がガット弦を張っているのは言うまでもないんですが、インマゼールこだわりの管楽器もまたすべてが70~100年前の「近古楽器」であると。意外と残ってるもんなんですねえ。

たとえば《ボレロ》。
インマゼールは、1930年に録音されたラヴェル/ラムルー管による自作自演(リンク先で1分間試聴可)に遡って丁寧に調べたらしいんですが、そこで
◆1.ラヴェルのテンポ設定は四分音符=66、演奏時間で16分10秒
    →作曲者は、速く振りすぎたトスカニーニとコッポラへの批判を口にしている
◆2.ヴィブラートはほんの僅か、もしくはまったくかけていない
    →第2次大戦以前はこれが普通(ノリントンも同じこと言ってますよね)
という2点、および1963年のクリュイタンスの録音を踏まえ、ゆったりとしながらも(演奏時間は16分53秒)繊細なノン・ヴィブラートが心地よい、新感覚の《ボレロ》を作り出しています。
(*これはライナーでは触れられていないけど、テンポについては1959年のロザンタールの録音との共通性も見出せるように思う。)

御託はこんな感じなんですが、そこから立ち上る音の「香り」、あるいは「匂い」―
これがちょっと筆舌に尽くしがたいくらいエロティックなんですね。
構造的にはもう現代の楽器と大して変わらないはずなのに、出てくる音は「楽機」と「楽器」くらい違う。奏者の息や筋肉の動きがよりストレートに伝わってくるので、1stVnが登場するまでの管楽器ソロが続く部分なんか震えちゃいますよ。特にバソンやテナーSax、ピッコロやトロンボーンの(現代楽器の光り輝く音とは異なる)円い音―。ううう。

「古楽」はついに初演当時の録音が残っている時代にまで侵攻してきたわけですが、しかしインマゼールの目的がラヴェル自作自演の模倣ではないのは明らか。この演奏を豊かにしているのは「近古楽器」の音だけでなく、彼の指示によるであろう退廃的な歌い回しと和音のセンス、そしてアニマ・エテルナのメンバーの超絶的なテクニックなんですな。クリュイタンスやチェリと同じ土俵に乗せない理由はない。
ナチュラルHrと徹底的にヴィブラートを排した弦がしっとりと歌い上げる《パヴァーヌ》(超絶的に美しい...)、短いメッサディヴォーチェが3次元的に交差する《スペイン狂詩曲》。けっして躊躇しない残酷なテンポが時折官能的に揺らめく《ラ・ヴァルス》。素晴らしい。
…今度はノン・ヴィブラートで萌えるストラヴィンスキー、就中《プルチネッラ》を!
by Sonnenfleck | 2006-10-15 22:24 | パンケーキ(20)
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