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ムソルグスキーを焼く男、1986年、三軒茶屋

帰ってきました。キスの天ぷらがあんなに美味いとはなあ。

c0060659_16263279.jpg【Altus/ALT140】
<チェリビダッケ/ミュンヘン・フィル '86年来日公演>
●シューマン:交響曲第4番ニ短調 op.120
●ムソルグスキー=ラヴェル:組曲《展覧会の絵》
●ドヴォルザーク:スラヴ舞曲第8番 ト短調 op.46-8

さて、このCDなんかつい先だって発売されたばかりのような気がするんですが、金山のサウンドベイで投げ売られていたので試しに買ってみました。今CDで聴くチェリ/MPOの一連の演奏は、ブルックナーやドビュッシーがどうしても耐えられないために―決して得意ではないのです。でもEMI盤《展覧会の絵》だけは、比較的常識的なテンポの中であの異常な音響美が聴けるので好きなんですよね。

ところがこれは…展覧会の遺骸というか、ルノワールの大回顧展に出かけたらどの作品もクリストよろしく「梱包」されてた…みたいな感じ。「梱包」されているので画布の大きさと額縁の輪郭ははっきりと伝わってくるのだけど、肝心の画面は暗めのベージュに覆われてしまって、そこからは何一つ判断できない。作品に対しての、さらに聴衆に対しての冷え冷えとした態度が感じられるだけです。
ライナーを書いている平林氏は、この演奏を評するのに「豊か」という単語をわざわざ2回も使用しているんですが、僕にはこの86年の演奏が「豊か」だとは到底思えません。響きの膨らみ・広がりは93年に録音された正規盤の演奏のほうが断然上、むしろその観点で言えばこの演奏は「痩せぎす」ぐらいに言ったほうがいい。ひとつの和音、ひとつのパッセージが、すべて極端に統制され抑制されて、内側に向かって閉じているこの感じは、シュトゥットガルトとのラヴェル・ドビュッシー集成(DG、愛聴盤です)に似ています。
〈古城〉中間部の弦による凄まじい弱音(これが聴けるだけでこのCDを買った意味はあった)、一時的に抑制を解かれて残酷な雨のように降り注ぐ〈ブィドロ〉、逆に直後の〈第4プロムナード〉では信じられないくらい抑え込まれた(それなのに美しい!)木管のアンサンブルが聴ける。残響のあまり感じられない録音状態が、〈カタコンブ〉〈死者とともに死者の言葉で〉の丁寧な行間にスポットライトを当てることになっているし、最後の〈キエフの大門〉の高密度な(そして高揚感のまるでない)感じはなかなか聴けるものではないでしょう。

シューマンの4番は丁寧に作り込まれた「普通の秀演」だと思う。でもムソルグスキーは…おかしなレベルに達しています。
by Sonnenfleck | 2007-06-10 16:36 | パンケーキ(20)
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