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ネパールから来た海賊(その二)

ネパールから来た海賊(その二)_c0060659_1132796.jpg【KARNA MUSIK/KA-205M】
●ショスタコーヴィチ:Vn協奏曲第1番イ短調 op.77
→レオニード・コーガン(Vn)
⇒ヴァシル・カザンジェフ/ソフィア・フィル
(1982年6月7日/ブルガリア・ホール)
●同:交響曲第10番ホ短調 op.93
→アルヴィド・ヤンソンス/レニングラード・フィル
(1984年6月19日/ソフィア文化宮殿)

まずはこの濃いメンツをしっかりとご覧下さい。それから日付と。

このネパールの海賊盤メーカーのデータを全面的に信用すると、コーガン、父ヤンソンスともに偶然にもそれぞれ亡くなる5ヶ月前の演奏記録なのです。
(*ただし父ヤンソンスについては、あいざーまんさんの海外オーケストラ来日公演記録抄を拝見する限り、1984年は6月14日まで日本にいて東響を振っているので、その5日後にいきなりソフィアで本公演を指揮できるのかなあとも思う。リハとかどうなんだろう。ここではKARNAの表記を信じたほうが楽しいのでこのまま行きますが。)

まずVn協奏曲ですが、工藤さんのサイトを拝見するとコーガンの録音は全部で6種類。うち日付が判明している5種類は60年代から70年代の演奏なので、当ブートの演奏は彼の最晩年の芸風を伝える意味で大変貴重です。コーガンはこの5ヵ月後に心臓発作で亡くなる。
もっともコーガンは当時58歳、元来完璧なテクニックのある人なので、この演奏でも瑕は皆無。第3楽章のカデンツァは「ネ申」と言ってしまって差し支えないんじゃないですか。なんと瑞々しい美音!ヘッドホンをかぶったまま固まってしまった。。この予想外に豊かな録音で脂の乗り切ったコーガンを聴けるということを考えると、この海賊盤の意義は大きい。
オケは…第2・第4楽章でリズムが後ろに倒れていて鄙びた味わいですが、テンポが落ちて辛辣になる場面での深い呼吸がいかにも東側のオケという感じ。第1楽章の後半以降ハープとチェレスタが絡んで真に抑制された響きが特に素晴らしいし、何よりも第3楽章・神カデンツァまでの筋道が美しいのは賞賛に値すると思う(第5変奏あたりから凄い)。

+ + +

で、父ヤンソンス/レニングラードのタコ10。
彼の指揮する演奏を聴くのはこれが初めてなんですが、まずは、第1楽章の第1主題を聴いてオケの音に痺れました。。湿り気を帯びずくっきりと明晰な響き、これがレニングラードの音。第2主題Flの太い響き、展開部の強烈な金管ユニゾン(刺すか刺されるかという…)、どれをとってもイメージどおりすぎて震えが来ます。そして第1楽章のおしまいが何しろ明るい!こういう方法をとる指揮者は(オケも!)今はもういないのです。。深刻な「ストーリー」ではなく、ソノリティで勝負を。。
しかし第2楽章はムラヴィンスキーとはちょっと路線が違う。アクセントが強くてバタバタしているのは、父ヤンソンスの諧謔趣味であろうか。それでも通常通りの大絶叫をかますオケには思わず微笑み返し。
第3楽章も意外に「ストーリー」寄りで興味深いです。指揮者から派手な要求があるようだけど、いっぽうでそれを律儀に実現しつつ、たとえば中間部の主旋律後方でまったく動じずにリズムを刻んでいる低弦部隊がいたりして楽しい。
そして第4楽章はまたひたすらに明るく、高貴に。しかーし!信じられないことに最後の最後でティンパニがすっぽり落ちちゃって(ノ∀`)アチャー 。これでは正規発売はムリです。。
by Sonnenfleck | 2007-07-15 01:17 | パンケーキ(20) | Comments(0)
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