昨日のBCJ《ロ短調ミサ》、出かけました。感想文はもうちょっとお待ちを。
【DISC9…SYMPHONIES】 ●3楽章の交響曲(1945) ※ ●交響曲ハ調(1940) + ●詩篇交響曲(1930/1948) + →エルマー・アイスラー/トロント祝祭合唱団 ⇒イーゴリ・ストラヴィンスキー/ コロンビア交響楽団(※)、CBC交響楽団(+) ベートーヴェン以降の「交響曲」って、そもそも作曲家の都合のいいことが都合よく書け、おまけに「これは交響曲だ」ということで自由が効き、奇抜な内容でもある程度までは都合よく受け取ってもらえる万能の装置ですよね。でも20世紀を半分近く生きてきたストラヴィンスキーにとっては、「野蛮で前衛的で華々しい3大バレエ」の作曲家が今度は「交響曲」を書きます、聴衆の皆さまどうぞお楽しみに、という非常に恐ろしいプレッシャーとの戦いだったんじゃないかなと思います。 バレエのように外枠のストーリーを用意しなくてもいいかわりに、「交響曲であるというストーリー」についての何らかの態度表明が求められるわけですからね。この気負ったタイトルを見ていると、作曲家の苦心が伝わってきます。。 さて極彩色でマッチョなショルティ/CSOの録音を散々聴いてしまって、《3楽章の交響曲》や《交響曲ハ調》はただエンタメ色が強いだけの作品だと思っておりました。 でも自作自演をゆっくり聴き直してみると、ダイナミックに設計されたいくつかの部分以外はけっして単純なウケ狙いではなく、意外にモノクロームで茫漠とした気分が支配的な曲なのかもと思った次第。 《3楽章...》のほうは特に楽器が裸になる「薄い」部分が多くて、楽器が集合的に扱われる「濃い」部分との対比をここで物凄くくっきりとつけてる演奏者ストラヴィンスキーへは、素直な賛辞を贈りたいですね。都会的でもスマートでもないし、野蛮でもゴリ押しでもない。乾いてギスギスしてて…でも面白い。これまで聴いてきた演奏者ストラヴィンスキーの基本姿勢はここでもブレがなく、まったり溶け合い感というより、互いに独立した束感重視といったところでしょうか。第2楽章中盤の冷たい雰囲気なんかもかなり巧妙に作り込まれているんだと思う。 で、《詩篇交響曲》はどうなのか。 妙に力ないアタック、表情が欠如した平板な合唱、弛緩したテンポ…とここまで書いて強調しておきたいのは、僕は演奏を貶すためにこれらの形容を用いているのではないということ。 演奏者ストラヴィンスキーはエンタメではなくもっとずっと非人間的な音楽を志向していて、そのために地味でくすんだ響きを積極的に選択し、演奏者には人間味を出させないようにし、ソロ楽器を突出させて束感を出す平生のやり方を封印してまで禁欲的な音楽(あるいは「楽」を省いた「音」)に接近しようとしている気がする。 感動的に聴かせようとすることができる第3楽章冒頭「Alleluja...」のため息も、このアプローチで行くと本当に金属のように冷たく響き、不思議な感覚に襲われます。
by Sonnenfleck
| 2007-10-08 10:12
| パンケーキ(20)
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Comments(3)
こんばんは。BCJの応援HPを運営しているやぐちと申します。ずいぶん前にOLCのことでコメントさせていただきました。
さて、BCJ@しらかわホールのご感想も楽しみですが、来年4月にこんな(リンク先をご覧ください!)演奏会があるのをご存じでしょうか。 まだ自分のHPでもお知らせしていない情報なのですが、ストラヴィンスキーつながりでご紹介してしまいました! 鈴木雅明指揮のストラヴィンスキー、日本のオケでもどこかでやってくれませんかねぇ!! P.S.しかし、しらかわホールでの「ロ短調」は凄かった・・・。
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Sonnenfleck at 2007-10-09 23:27
>やぐちさん
お久しぶりです!名古屋ではOLCが聴けないので残念な日々ですが。。 しかしこのプログラム…絶句ですね。まさかプルチネッラとは。来年の1月に名古屋フィルの定期で雅明さんがプーランクとデュリュフレをやってくれる予定なんですが、そんなレベルではないですね。う~ん聴きたい!本当に聴きたいです!
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dr-enkaizan at 2007-10-10 00:17
毎度です
なんか凄まじいネタをやぐち様がご提示、目が点になっております。 >鈴木雅明指揮のストラヴィンスキー、日本のオケでもどこかでやってくれませんかねぇ!! まったく同感です、嘆かわしくも日本の興行主の真相はいまだ芸術と芸能の区別がついていないらしく、一枚看板での売りで食い尽くす姿勢が抜けていないところがありますね。 この辺はファンや一般層がその利点を広く論じる必要がありそうです。 今回の詩篇交響曲については、その管弦楽編成の特異性や、合唱の抑制の概念など、言及するには今多少時間が足りないゆえ、後日、コメントかトピックをじっくりいたしますゆえ暫し待たれよということで。 因みに、古楽がらみでのストラヴィンスキーといえば・・・・プルチネッラは嘗てホグウッドが原曲と一緒に全曲を録音したときは驚愕したものです。
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