人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ほとけのシェルヘン(猟奇的な意味で)

ほとけのシェルヘン(猟奇的な意味で)_c0060659_7545352.jpg【UNIVERSAL=Westminster/471 263-2】
●マーラー:交響曲第7番ホ短調
⇒ヘルマン・シェルヘン/ウィーン国立歌劇場管弦楽団

秋らしくなりました。クルマのシートに座るとひんやり。
ここ数日、往還の車中で聴いているのがシェルヘンのマラ7です。
大音量でモノラル録音が聴けるのは本当にありがたい>クルマ。

奇数楽章は、何が言いたいのかよくわからない、表現主義的で不気味な瞬間が多く、はっきり言って落ち着きません。当然ラトルのようなデジタル風味ではないし、ベルティーニのライヴのような明解さもないし、テンシュテットのように荒れ狂うわけでもないし、クレンペラーのように拡大された理性が箍として填まっているわけでもなく、さながら苔むして表情も読み取れない路傍の石仏。そんな中で、石仏が「ニィッ」と口の端を持ち上げるような超自然的ドライヴ感を何度も味わうことができるというのが、この演奏の貴重なところのひとつかなと思います(強引な伸縮が多い第1楽章に顕著)。

この録音の何が面白いかというと、偶数楽章に漂っている奇妙な色気なんですよ。
ニッと笑う石仏の近くに、強くて甘い香りのする山百合が咲いている…ほかの録音では味わえない、遠近感が狂うようなその対比が魅力。
特に第2楽章の、ほんのちょっとしたニュアンスが実に美しい。
俗っぽくてジモティな音を持つ、このオケの面々がやりたい放題歌いまくっているんですから、こうした印象も当然と言えば当然。木管の濃厚な歌でリスナーを篭絡しながらも、、中間部の入り口に登場するVcの行進がもたれないところなんか感心します。さすが。

あと第4楽章のVnソロですね。このポルタメント!甘~い!マンドリンも濃厚でたまらん。
秋の朝、あるいは秋の夜、車窓を流れていく日常の風景がぐにゃりと歪んでいく。そんな音楽に耳を傾けるのも悪くないです。もちろん、早めの点灯と一時停止を遵守しつつ。
by Sonnenfleck | 2007-10-27 07:56 | パンケーキ(20) | Comments(3)
Commented by モザイク at 2007-10-27 17:39 x
こんにちは。
マーラーを聴いてみようと思って初めて買ったCDが、クレンペラーの7番でした。今考えると、とんでもないファーストチョイスでしたね。マーラーもクレンペラーも何も知らないのに(或いは知らないから?)この選択なんて。勿論、よく分かりませんでした。今でも、はっきり「分かった」とは言えない曲ですが・・・。
ただ、クレンペラーにはお世話になっています。1つ1つの音を大切にしているのか、結果的に音の集合体として一風変わった、それでも立派なものになっているのが独特で、長い付き合いになりそうです。対向配置と木管強調も気に入ってます。
フィルハーモニアの木管、特にフルートの独特な音色もいいですね。昨日のお話のフルートは、木管フルートの名手、ガレス・モリスでしょうか?彼の朗々と響くストレートな音色は、余人を以て代え難いものがあるように思います。
Commented by モザイク at 2007-10-27 17:40 x
続けて失礼いたします。
話題は変わりますが、ピーカンでバーゲンやってますね。初めてだったのですが、まさに宝の山でした。中には状態が・・・というものもあるようですが、不満は感じませんでしたね、特に。ホリガーのシェーンベルク(映画の一場面のための伴奏音楽ほか:TELDEC)や名手フリーデマン・インマーの初期バロック協奏曲集(MDG)、シール帯つきのアバド/LSOによる展覧会の絵(DG)などなど、大収穫でした。なかでも、Bayreuther-Schmunzel-Wagner(バイロイトのお笑いワーグナー?)には興味津々です。ブリュッヘンも入手しました。ドホナーニは、やはりと言うべきか余り無かったですね。何せ、1枚315円でしたから、ここぞとばかりに投資しました。後悔は(今のところ・・・)ありません。
長々と失礼いたしました。またお邪魔させていただきます。それでは。
Commented by Sonnenfleck at 2007-10-27 23:33
>モザイクさん
第7の、というだけでなく、ファーストマーラーがクレンペラーのあれだったとは…。慧眼ですね。あの演奏の中にはマーラーのある一要素が最高に凝縮した形で表現されてると思います。第1楽章から第2楽章にかけて、もうこれ以上はムリ、という段階からさらにもう一段階テンションを上げてしまいますからね。しかも感情に流されたり荒れ狂ったりするわけでなく、易々とそれをやってしまうんですから。クレンペラーの第7を聞いた後はしばらく他のどんなマーラーもどうしようもなくつまらなく聴こえるので、あまり近づかないようにしています(笑)
下のフルートってやっぱりガレス・モリスという人なんでしょうか。今年の2月までご存命だったんですね。素晴らしい音。。ピーカンのセールにはやはり行かざるを得ないでしょうか。今回は我慢を決め込むつもりだったのですが;;
<< 午前10時の不戦勝 忘れがたい1962年 >>