僕だけのグルダ(部屋の中で)

c0060659_6591996.jpg【DG/00289 477 6130】
<the GULDA MOZART tapes>
●Pfソナタ第1~4、5、9、10、12、13、15番
●幻想曲ハ短調
⇒フリードリヒ・グルダ(Pf)

去年からiioさんの絶賛を拝見してたのに、タイミングを逃してしまって入手せずにいた、グルダの「モーツァルト・テープス」。
先日、信頼するセンスを持つ友人がリアル世界で「やはりよい」と後押ししてくれたのをいいことに探し始めたところ、いきなり今池・ピーカンファッヂで中古良品が見つかってしまって、これは何かの巡りあわせかなあと思われました。

2006年モーツァルト・イヤーの目玉の一つでしたから、聴かれた方も多いことでしょう。
いろいろ言われている録音状態も、当初の予想よりずっと良好。確かにマイクがピアノに近く、ピアノの筐体そのものが鳴る音がビンビン飛んできて、元気のいいパッセージが連続すると聴き疲れしないとは言えない。しかしマイクがピアノの1から10まで均等に拾い上げるので、1と2の間にある、グルダらしい繊細な目盛りが、こちらで苦労することなく自然に流れ込んでくるという強力なメリットがある。
要するに、小さな部屋で、目の前で、グルダが僕のためだけにモーツァルトを弾いてくれているのに耳を傾けるような、そんな錯覚OKの録音なんですよ。深夜に部屋の灯りを消して、グッと音量を絞ってヘッドホンで聴くと、本当にそんな気がしてきます。

第12番ヘ長調の第2楽章を聴いたら涙が出た。涙のあとに鼻水が出た。
呵々とした笑いにほんのちょっとした湿度が伴うモーツァルト、これはグルダの協奏曲録音でもいいところまで実現されていたと思うんですが、この「モーツァルト・テープス」では、グルダという男が独りで考えていた世界が特にはっきりと実現していると思う。
つまり、例外なくどの作品も、真ん中の緩徐楽章が切なくて愉しい。愉しくて切ない。
by Sonnenfleck | 2007-12-14 07:03 | パンケーキ(18)
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