【2007年12月21日 ミュンヘン・ヘラクレスザール】
●バッハ:ミサ曲ロ短調 BWV232
→キャロリン・サンプソン(S1)、ダニエル・テイラー(A/S2)
チャールズ・ダニエルズ(T)、クラウス・メルテンス(Bs)
→バイエルン放送合唱団
⇒トン・コープマン/バイエルン放送交響楽団
(2008年4月21日 Netherlands Radio 4)
何もかもが「マジっすか」という組み合わせの《ロ短調ミサ》ライヴ。。
やはりコープマンのバッハには神々しさのかけらもないのですが(誉め言葉です)、それがこの作品に適用されると、親密でありながら開放的な空間が発生して素敵。
グッと響きを縛り付けて緊張させた
BCJのライヴとは、見事に逆方向の、いい演奏でした。
バイエルン放送響は、これが
去年ブルックナーを豪奢に鳴らしていたのと同じオケなのかというくらい楚々としたアンサンブルになっていて吃驚。
基本的にノンヴィブラートですが、コープマンの指示はそんなに教条主義的ではないので、響きは痩せない(オケの技量もあるだろう)。そのうえアリアを彩るオブリガート管楽器(Fl、Obダモーレ、Hr)の滑らかな歌い口が反則です。楚々としたアンサンブルの中にあってはモダン楽器の生の音は妖艶すぎて。。
しかし、バロック音楽を快楽主義的に聴きたいという聴き手のことを思えば、あるところではカラヤンのような演奏を理想に掲げて分岐していったっておかしくはないんだ。そろそろどこかのピリオド団体がそれをやり始めるんではないかと、僕は思っています。
話がずれましたが。
キャロリン・サンプソンの美声に聴き惚れることしばし。
そして、ダニエル・テイラーの完成された「女声らしさ」にも心を奪われる。
あれだけ声が綺麗だと、音程がやや不安定なことすら計算されているのではないかと思ってしまいます。たとえばブレイズの汁っぽい歌唱も非常に味があるけど、テイラーは男声と了解されているが故の、女形のような魅力があります。
この二人による第1部冒頭の
Christe eleison... の二重唱が絶美なのは当然。それに続く嬰ハ短調の四部合唱
Kyrie eleison... を下から支えるオケの絶妙なエロス。