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on the air:インバル/都響 《千人の交響曲》

c0060659_6335271.jpg【2008年4月30日 サントリーホール】
●マーラー:交響曲第8番変ホ長調~第1部、第2部(後半)
→澤畑恵美、大倉由紀枝、半田美和子(S)
  竹本節子、手嶋眞佐子(MS)
  福井敬(T)、河野克典(Br)、成田眞(Bs)
→晋友会合唱団、NHK東京児童合唱団
⇒エリアフ・インバル/東京都交響楽団
(2008年6月29日/NHK教育テレビ)

東京時代に最も好きだった、最も足しげく通ったオーケストラが都響だったことを、久しぶりに思い出させてくれる好演でした。

デプリーストがシェフに就任したのと同時に名古屋へ来たため、ここ数年はまったく聴く機会がなかった都響、、このコンサートはぜひ聴きに行ってみたかったんですよ。残念ながら日程も合わずチケットも早々に売り切れたためライヴは叶いませんでしたが、こうして放送してくれたNHKには感謝(稚拙なカメラワークと醜悪な番組構成にも目をつぶろう!)。

+ + +

インバルのマーラーに対しては、小骨が多くて嚥下に苦労するような印象を持っていました。細かな仕掛けの多い演奏、基本的には好きなんですが、ことマーラーに関してはそれ自体の複雑さをストレートに表現するだけで十分じゃね?というスタンスなんですよ。そのため(あえてそういう書き方をすれば)CDで聴いたインバルのマーラーが「賢しさ」を放出するのが厭で、敬して遠ざけていたと。そんな感じです。
しかし番組中でも語っていたように、インバルにとって第8番は特別の作品らしい。
確かに、盛んに口にしていたfestiveという形容詞がそのまま音になっていたんです。

まるっと放送された第1部は、まずその雄渾な流れに驚かされました。
非常に柔和な開始に「あーまたインバル節かよ」と感じたのも束の間、きりりと引き締まったテンポに乗って、太い音の筋がびゅうびゅう流れ始める。ベルティーニのやっていた音楽を思い出して思わず目頭が熱くなりましたよ。ホントに。
いっぽうテクスチュアが薄くなる箇所ではインバルらしいバランスへのこだわりが見え、同時にテンポも緩やかに情熱的になって美しい「澱み」が表出します。この澱みの中に小骨が見えてしまうのが僕の知っているインバルのマーラーだったけれども、この演奏ではあくまでとろりとした蜜状の響きで厭らしくない。なーるほどねー。

第2部は「マリア崇拝の博士」のあたりから。
福井さん始め男声陣は熱演でしたね。女声は澤畑さんと竹本さんが流石の貫禄。
さてもこの後のスケルツォ的シーンについて、インバルの手管と都響の管楽アンサンブルには大きな声で賛辞を贈りたいです。ライヴで、しかもあの快速テンポで、まっすぐ《大地の歌》に流れ込むような煌めきがしっかり表現されるとは。。凄いなあ。。
テノールの「Blicket auf...」から先、音楽がとびきり柔和な表情をしていたのが印象的です。もはや神経質に設計される心配に胸を痛める必要もなく、インバルもオケもステージにいるメンバーがみな音楽に陶酔しているのがよく伝わってまいりました。最後のとびきり下劣なフライングブラボーもこの雰囲気を壊すことはできなかった。

都響の「ニュアンスを汲み取って積極的に表現する雰囲気」は、果たしてしっかりと維持保存されていたように思いました。2004年にみなとみらいで聴いたベルティーニの《千人》と、この日のインバルの造形はやはり様々な面で異なっていたけれど、オケから湧き上がってくる真摯な響きはまったく同じ。安心した。やっぱりこのオケが好き。
by Sonnenfleck | 2008-06-30 06:37 | on the air
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