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モンポウ、消え入るように

c0060659_6272244.jpg【BRILLIANT CLASSICS(ENSAYO原盤)/BRL6515】
●モンポウ:Pf作品全集
⇒フェデリコ・モンポウ(Pf)

名古屋に引っ越してきてから、ずっと蛍光灯の直接照明の下で生活していました(比喩的な表現じゃなくね)。

でも、すべてをあからさまに照らす白い光にいい加減うんざりして。一ヶ月ほど前に電球色の小さなクリップ式スポットライトを買い求めて、いま、壁を照らす間接照明に切り替えています。音楽を聴いて自分を解放するひと時を柔らかくすることができたし、橙色の鈍い光で見えなくなったものも多いけど、見えるようになったものも多い。

モンポウの音楽も、それに似ていると思うんです。
何かをカッと照らす迫力も威力もないけど、ただそれ自身で静かに柔らかい光を発している(たぶん「投げかける」というほど他者を必要としていない)。
最初の感触は確かにサティに似ていますよね。
でも彼のように何か明確な主張があるわけじゃない。ぼんやりと椅子に腰掛けてひとりごつモンポウの前では、「私は変わっているので、主張なんてありません」と大声で主張しているサティが眩しくてよく見えてきません。サティに照らし出されている間は集中して耳を傾けなくちゃいけないなあと思うんですが、モンポウの鈍い明かりの元では、聴き手はいつそこに出入りしても許されるような不思議な開放感があるんです。

何より、彼の紡ぎだした音楽は時間との境目が曖昧で、どこまでがピアノの音でどこからがその周りの時間の流れなのか、よくわからない。時間に指針を与えて一定の形を取らせ、感じられるようにしたのが音楽だとしたら、モンポウの指針は「最低限、形を作って、あとは好きにしていなさい」というくらいのものだったんでしょう。

モンポウ自身のピアノで。昨日は《ひそやかな音楽》第1集から第4集を聴きました。
こういう音楽の前では録音がどうとか技巧がどうとか、あまり問題にはならない。
by Sonnenfleck | 2008-08-06 06:30 | パンケーキ(20)
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