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ウォルトン世界に渡る橋

ウォルトン世界に渡る橋_c0060659_847338.jpg【ASV/CD QS 6093】
<ウォルトン>
●交響曲第1番変ロ短調
⇒ヴァーノン・ハンドリー/
  ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団
●前奏曲とフーガ《スピットファイア》
⇒スチュアート・ベッドフォード/イギリス室内管弦楽団

坂本くんさん山尾さんが哀悼の意を表していらっしゃるとおり、指揮者ヴァーノン・ハンドリーが9月10日に亡くなったそうです。合掌。
イギリス音楽は老後の楽しみのために大切に取ってあるので、イギリス音楽の伝道師たるハンドリーの録音にはほとんど触れたことがないんですが、唯一所持しているのがこのウォルトンの交響曲第1番のディスク。

このディスクが僕とウォルトン世界を結ぶただ一本の橋なので、それこそ何度も繰り返し聴きました。何度も聴きましたが、ウォルトンの音楽を把握して言葉にするのは本当に難しい(というかイギリス音楽は、全般的にそういう存在である>僕にとって)。
目の焦点が遥か彼方に合わせられている瞬間があり、逆に空気が急激に一点に集まって爆発する瞬間があり、邪気があって、それでいて途轍もなくセンチメンタル…と言えばプロコフィエフに似ていないではないのだけど、いや、やっぱり独自の世界だ。

この曲に関しては「迫り来る戦争を意識してドータラ」という解説をよく目にするんですが、本当にそうだろうか。わからない。もっとシンプルな、音響を使って遊んでるんじゃないかなというような気もするんですよ。自分にはそのように思われる。
そうした思いが涌くのは、たぶんこのハンドリー盤が恐ろしくドライで厳しい音響をしているからだろう。詳細なデータが書かれていないのだけど、この録音では残響ほとんどゼロという奇妙な音場づくりがされていて、放出された音は岩のように凝縮してゴロンゴロンと転がっていくか、さもなくばその瞬間で砕け散ってしまう。
そうした音響特性の中にあっても、第3楽章の硬質な抒情を力づくで作ったりしないのだから、ハンドリーという人はなるほど英吉利紳士と言っていいのでしょう。
by Sonnenfleck | 2008-09-15 08:50 | パンケーキ(20) | Comments(0)
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