EROICA IN THE SHELL

c0060659_685997.jpg【DHM/BVCD38226】
●ベートーヴェン:交響曲第1番ハ長調 op.21
●同:同第3番変ホ長調 op.55
⇒ヤープ・シュレーダー/スミソニアン室内管弦楽団

ピリオド・アプローチがどのように変化してきたのか、、大掴みには把握していたつもりでしたが、世界は広い。まだまだ知らないことだらけ。たとえばこのベートーヴェンなんですが。

地味で害のなさそうなジャケットの後ろに広がってるのは、サイバーパンク世界でした。
こんなに管理され、こんなに乾燥して、こんなにギンギンのピリオド味。
耳がヒリヒリする。絶望的にストイック。
猛烈な推進力、グロテスクにすら聴こえる生々しい古楽器の音など、印象としてはノリントン/LCPにとても近いんです。しかし、彼らが聴き手を喜ばそうとして入れてくれる小爆発や楽しい装飾に関して、シュレーダー/スミソニアンではまったく一顧だにされない。ライナーノーツによればVn12人、Va4人、Vc3人(エロイカでは4人)、Kb2人という編成らしいけど、数字以上に人の少なさ、酷薄な響きが全面に押し出されてきます。ほとんど抑揚らしい抑揚がないにもかかわらず、メカニカルな拍節感だけは折り目正しく整えられて、とっっっっっっってもヘンな感じだ。
それでもまだ第1番の方が自然に聴こえるのが面白い。第3楽章がスケルツォじゃなくメヌエットだということにここで気がつくわけだし、薄い空気が瞬間的に後方へぶっ飛んでいく第4楽章も心地よい。かたや第3番は器がでかすぎ、広い部屋の隅で体育座りしている少年を見るようで忍びない(「ぽんっ...ぽんっ...」と開始される第1楽章が特に哀感漂う)。

エピキュリアンが支配する00年代以降のピリオド界隈、対して80年代後半にふと現れた孤高の管理型ハイパーピリオド。後者はこのあと有力な後継を作ることなく途絶えてしまったようであるけど、今となってはあまりにも面白いサイバーパンク。もしもピリオド世界がこっちの方へ進化していたら、この演奏はまさに太祖として崇め奉られていたに違いない。
by Sonnenfleck | 2008-10-05 06:10 | パンケーキ(19)
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