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2008年 05月 01日 ( 1 )

突き刺さる先端に疲れたら

c0060659_6573250.jpg【edel CLASSICS/0002822CCC】
[レーゼルの芸術 Pf独奏曲編:CD12~シューベルト]
●幻想曲ハ長調 D605 《グラーツ》
●メヌエットとトリオ イ長調 D334
●アレグレット ハ短調 D915
●2つのスケルツォ D593
●3つの小品 D946
●アダージョ ホ長調 D612
⇒ペーター・レーゼル(Pf)

去年の夏に買った14枚組レーゼル廉価箱は、ストラヴィンスキー・マラソンとは違ってときどき思い出したように(順番もテキトーに)ぽつぽつと聴き進めています。
で、シューベルトのけっして有名ではない小品を集めたこの1枚でもって、この箱の価値はずいぶん高いところまで引き上げられているように思う。いや、ブゾーニ版シャコンヌだって凄いし、木目調ドビュッシーも素敵だけど、このシューベルトがいいんだ。

これまでレーゼルに注意してきたわけではないので、ほとんどこの箱で初めてこのドイツ人ピアニストの演奏を聴いたようなものです。彼の出す音が面白いのは、どんなに激しいパッセージでも耳に突き刺さってくるということがないというところかな(一時期好きだったポリーニのシューベルトなんかも、最近は内耳に音の矢印が刺さってくるみたいで辛くて聴けません)。

したがって、《3つの小品》の第2曲 変ホ長調中間部の、ちょっとドヴォルザークみたいに悲劇的なパッセージも、ゆとりある円い響きで聴こえてきて気持ちいいです。そのままどっかに消えてしまいたくなるなあ。これが「疲れにシューベルト混入」の怖いところ。
逆にアレグレット ハ短調のように放心した素のシューベルトがさっと覗くような曲では、そのタッチの円さゆえに、優しい常識人のおじさんが急に放心してしまったような独特の気持ち悪さが発揮されている。ユニゾンのあとで音が消え、「タンタン...タンタン...」という暗い不協和な呟き。何とも言えない気分になります。
by Sonnenfleck | 2008-05-01 06:57 | パンケーキ(19)