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ルガーノの黄色い車に乗って。

c0060659_72131.jpg【aura/AUR120-2】
●シューマン:交響曲第2番ハ長調 op.61*
●ドビュッシー:管弦楽のための3つの交響的素描《海》**
●ベルリオーズ:《ラコッツィ行進曲》*
⇒ジョージ・セル/クリーヴランド管弦楽団
(*1957.5.31、**1968.1.19)

自分のキャリアのかなり初期に手に入れた、至高の名盤のひとつ。動くキ印;セルルガーノライヴと、動かないキ印;クレンペラー/NPOとを原料に、僕のシュマ2観は醸成されたと言ってよい。酵母としてねばねばしたバーンスタイン/VPOも入ってるかも。

ホリガー/新日フィルの公演を予習するために、久しぶりにこのディスクを取り出して聴いていたのですが、やはり凄い演奏なんである。当時世界最強のオーケストラを恣にして特段の自分語りや茶目っ気にも走らず、スコアの要求をクソ真面目に実現させようとしたただの結果であるっぽいところが善い。
(いや、もしかしたらセルのことだからスコアの改変をたくさんやっているのかもしれないが、新機能ゴテゴテではなくナチュラル強化改造ならべつに構わないなあとも思う。)

50年後の昨今ありがちな「オレ、シューマンの病巣を抉りだしてやるもんね!」という「カッコイイ音楽づくり」ではなくて、クソ真面目すぎて狂気、という現象が理想的なかたちで引き起こされているのがクールだ。もし他人の狂気を完璧に再現するなら、再現者は自分のアイディアが可笑しくて吹き出していたり、まして狂っていたりしてはならない。これは自分の鑑賞哲学。

+ + +

この曲の第1楽章序奏はフランス風序曲へのパロディの可能性があるが、前述のような態度から生まれるのはあくまで荘重さである。入れ子状のパロディ。そして主部に入ってから第2楽章までずっと続く、落ち着きのない軽さと堅牢な強迫観念。セルがオーケストラに求めている筋肉は短距離ランナーや槍投げのそれである。シューマンの交響曲は第2番が群を抜いて圧倒的な傑作だと思っているんだけれど、こういう強烈な演奏で聴くたびにその思いを新たにするよねえ。

急転直下、第3楽章のべっとべと浪漫も面白いところだし、危なめ旋律を自信満々に朗々と歌い上げる第4楽章も素敵です。
by Sonnenfleck | 2012-11-03 07:28 | パンケーキ(19)

夏の音楽

c0060659_21223526.jpg

これについて書いたことあったかなあ。もうわかんないなあ。

【LONDON(DECCA)/KICC-8415】
<オンブラ・マイ・フ/セル・コンダクツ・ヘンデル>
●ハーティ、セル編:組曲《水上の音楽》
●ビーチャム編:《忠実な羊飼い》~メヌエット
●ハーティ編:組曲《王宮の花火の音楽》
●ラインハルト編:《クセルクセス》~ラルゴ
⇒ジョージ・セル/ロンドン交響楽団

ムラムラと聴きたくなって、久しぶりに取り出してみたら、やっぱり佳い。素敵だ。

ここに録音された《花火...》の序曲は、通常の3倍くらいの巨体として造形されているにも関わらず、どのディテールを取り上げてもつるりと円やかな曲線美という、究極のオーケストラ演奏の一つだと思います。
ニケやサヴァールの演奏を知ってしまった今日、世界のどこを探してもこのようなライヴとは出会えないのでありましょう。完全に絶滅した演奏様式がこのようにくっきりとした録音で遺されているという事実も、バロック音楽の人造性に似つかわしくてゾクゾクしますな。
轟々と鳴り響くメヌエットは、舞曲という使命から解放された幸福でいっぱいであり、ロンドン響からはところどころ、ベートーヴェンのような英雄心すら感じる。最後の物凄いフェルマータ!

アルバムの組み方としてもいいなと思っていて、《花火...》で終わるともしかしたら下品になるところを、余韻を多く含む「ヘンデルのラルゴ」で閉じる余裕がいいよね。2010年には絶滅しているかもしれない天然物の余裕。

1961年の8月は特別だったか。49年後の8月に思う。
by Sonnenfleck | 2010-08-11 21:45 | パンケーキ(18)