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ラグジュアリーへようこそ!

学生時代、バロック音楽を演奏して楽しんでいたころは、テレマンやヘンデルからの距離の遠さが面白くて長兄フリーデマンBや次兄エマヌエルBを好んで聴いていた時期があったのだけれど、そうしたとき、末弟クリスティアンBは僕の視界に入ってこなかった。たぶんクリスティアンBを感知するにはレーダーを違う方角へ向けなければならなかったのだ。

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c0060659_749429.jpg【Glossa/GCD920607】<クリスティアン・バッハ>
●シンフォニア第3番 変ホ長調
●シンフォニア第4番 変ロ長調
●シンフォニア第5番 変ホ長調
●シンフォニア第6番 変ロ長調
●シンフォニア第1番 変ホ長調
●シンフォニア第2番 変ロ長調
⇒エリック・ヘープリチ/ナハトムジーク

過去、このブログでは何枚かのディスクを通じて「クリスティアンはプログレッシヴ・バロックだ!」とか「クリスティアンはラブコメ(ハート)」などと勝手気儘に断じてきました。
今回、エリック・ヘープリチ氏(またの名をホープリッチ、ホープリチ、ヘープリヒ)と彼のアンサンブル・ナハトムジークで聴くウィンド・シンフォニーは、また新しいクリスティアンBの魅力を伝えてくれている。それは、彼の作品の恐ろしいまでのラグジュアリーさである。

このディスクを最初に再生し始めた瞬間から、最後のトラックの時間が尽きるまで、一部の楽章を除いて人為的な音楽的展開はほとんど見込めない。時間をこのように美しく飾り、不毛に過ごすことの贅沢さよ!まったくつるんとして非の打ちどころがないヘープリチたちのアンサンブルもそれに拍車を掛ける。

ギャラントの作曲家たちが住んでいる音楽ラグジュアリーの世界では深刻さはむろんのこと、恐らく稚気や官能すらふんだんには必要ではないと僕は考えていて、だからこそ苗床になっているバロック音楽の袋小路的正統なんじゃないかと思う。
でも、バロックの宮廷からクリスティアンBたちが引き継いだ音楽ラグジュアリーの広大な荘園は、力のある分家筋であるハイドンやモーツァルトに簒奪されてしまった(メンデルスゾーンがJSBに惹かれていたのはすごく納得がいく)

クリスティアンBのギャラント様式による作品は、しかし第4番のラルゴのようにモーツァルトも真っ青な強烈な美しさを湛えている楽章を突然産み落としていたりするので気が抜けない。《グラン・パルティータ》のお手本のようでもある。
分家筋的な稚気と淫靡の音楽に足を踏み入れることができるのに、普段は必要がないかぎり均整のなかに留まり、あえて抜け出ないのもクリスティアンBの魅力。




↑第4番変ロ長調の第2楽章ラルゴ、ロンドン・ウィンド・ソロイスツで。

by Sonnenfleck | 2013-03-30 09:45 | パンケーキ(18)