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幕末のリュートソング・ブック

c0060659_917721.jpg【キングレコード/KICX-8565】
<邦楽決定盤2000シリーズ・端唄>
●端唄名曲オムニバス
⇒根岸登喜子(Vo)、神楽坂まき子(Vo)ほか




この前の金曜、疲れて帰ってきてEテレの『芸能百花繚乱』を眺めていたら、「もしかしてこれじゃね?」という気持ちがにわかに湧き上がったのである。
純邦楽のデカダンス、閉塞感、閉塞感の中の粋。

iTunesストアですぐに「端唄」と「清元」をダウンロードする。
邦楽独特の呼吸感に慣れるまでは…などと思う間もなく、須臾にして身体中に邦楽のリズムが染み渡っていくので可笑しくなってしまった。これまで少しずつ身体に蓄積してきた邦楽の胞子が、喜んでぷちぷちと反応している。そうしてiPodに入れて通勤電車で聴けば何とも言えぬ酩酊に襲われて、目前の世界が現実味をなくす。

この変な身体感覚は何か?
身体の中の暗いところに密かに根付いていた菌糸から、見たことのない茸が生えてきたような感覚は。その茸の懐かしくまた頗る美味であることよ。

+ + +

天保の改革より後の年代で江戸庶民に大流行した、三味線(Smsn)伴奏付きの小歌曲を「端唄 はうた」と呼ぶ。
2~3分の小さな枠組みの中で、花鳥風月に色恋を仮託するスタイル。しかし、幽愁に満ちた音楽が多い…というわけでもないのがダウランドあたりとは如実に違うところで、端唄は掛け言葉や擬態語をリズミカルに使って愉快さや明るめの皮肉も追求している。旋律も覚えやすいね(このへんの江戸庶民の心情は、渡辺京二『逝きし世の面影』(平凡社ライブラリー)に詳しい)。

実は、リズムよりもメロディよりも、違和感が取れるのがずっと遅かったのが「日本語歌唱」という様式だった。
しばしば感じていることだが、僕らは日本の伎芸に対して(菌糸が届かない表面的には)すでにアラバマ州のボビーと変わらぬ視線しか持ち得ない。宿命的ねえ。
by Sonnenfleck | 2011-11-05 10:54 | パンケーキ(19)