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新国立劇場 《軍人たち》 初日

c0060659_745513.jpg【2008年5月5日(月)14:00~ 新国立劇場】
●B. A. ツィンマーマン:《軍人たち》(日本初演)
→鹿野由之(Bs/ヴェーゼナー)
  ヴィクトリア・ルキアネッツ(S/マリー)
  山下牧子(MS/シャルロッテ)
  寺谷千枝子(MS/ヴェーゼナーの老母)
  クラウディオ・オテッリ(Br/シュトルツィウス)
  村松桂子(MS/シュトルツィウスの母)
  斉木健詞(Bs/フォン・シュパンハイム伯爵 大佐)
  ピーター・ホーレ(T/デポルト)
  小山陽二郎(T/ピルツェル大尉)
  泉良平(Br/アイゼンホルト従軍牧師)
  小林由樹(Br/オディー大尉)
  黒田博(Br/マリ大尉)
  森山京子(MS/ラ・ロッシュ伯爵夫人)
  高橋淳(T/伯爵夫人の息子) 他
→三澤洋史/新国立劇場合唱団
→ウィリー・デッカー(演出)
⇒若杉弘/東京フィルハーモニー交響楽団

劇薬のようなオペラでした。
有楽町で三日間かけて聴いたシューベルトの印象が消し飛ぶくらい。
まずは、日本初演を実現に漕ぎ着けた関係者各位にブラヴォを飛ばしておきたいです。

■音楽と演奏
予習は一切なしで臨みました。
クラスター気味の強烈な和音で開始される第1幕への前奏曲は、目に飛び込んでくる映像と相まって、多くの聴衆を粟立たせたことでしょう。クラスターなのに肌にまとわりつくような粘り気を覚えたあの箇所、若杉監督と東フィルの意気込みがよく感じられましたもの。
テクスチュアが静かになると、今度はPAを使って大袈裟に拡大されたチェンバロやギターの音が、俗悪なレチタティーヴォに絡み合って素敵な効果を上げています。

クラヲタとして最も強いインパクトを受けたのは、やはり第2幕。
カフェのテーブルの上で繰り広げられる軍人たちの性描写とその背後に流れるジャズ。
これは名フィルで聴いたトランペット協奏曲の内容から十分に予想される。

しかし、鋏を持った母親とシュトルツィウス、ヴェーゼナーの老母、性行為に及ぶマリーとデポルト、この3場面が舞台上で同時に展開するクライマックスで、突如湧き上がるJSB《マタイ受難曲》のコラール〈われなり、われこそ償いに〉
これは完全に予期していなかった出来事で、、椅子の上で硬直してしまいました。ところどころ激しい不協和音で途切れながらも、あのエグいシーンで、あの美しいメロディがほぼそのままトゥッティで演奏される。。こんなにクソ真面目な対比を衒いなく作ってしまうとは。。若杉センセとオケも渾身の清らかさでそれに応えてましたよ。

楽音、電子音、軍楽のコラージュ。第4幕の大詰めは(プログラムの解説によれば)ホール中に配置された10群のスピーカによる破滅的な大伽藍の出現。これはあそこに身を置いて正解でありました。心拍数が上がって上がって。。
若杉センセに一本だけ飛んだブーは、僕には理解できません。

■うた
マリー役のルキアネッツと、シュトルツィウス役のオテッリが圧倒的。文句ない。
デポルト役のホーレも嫌らしくて非常に良かったんですけど、カーテンコールのときみんな赤い外套を着てるもんだから、見分けがつかず拍手をし損ねました。

■演出
デッカーの演出は、白と赤と黒を基調にしたシンプルなもの。
「意味がないことを意味する暗喩」を排除した結果、残った暗喩はすべて物語の展開に直結して、わかり易すぎるくらいわかり易いスマートな運びとなっていました。
(最初と最後に登場した「無個性の群衆」はB級ホラーみたいで好きではなかったです。どうせならエヴァンゲリオンみたいに客席にカメラを向けてしまったらよかったのに。)

一方で、これって母親による支配のお話なのかなとも思う。
シュトルツィウスは鋏を持った母親の庇護下にあるようにしか見えないし(最後はそれを振り切ってひとりで「勝利」しちゃうけどさ)、伯爵夫人は若い伯爵の母であると同時にマリーの擬似母になろうとする。
ではマリーの本当の母親は?姉シャルロッテは「軍人たちの娼婦!」という罵言を大きな声で叫ぶことができず、ヴェーゼナーの老母は常識的な秩序の上にあぐらをかくばかりで、ついにマリーを御し得ないわけです。母親の庇護を受けることができず、鏡で自分を見るしかなかったマリーは道を踏み外して、彼女の救済は幕引きの直前に「演出家の慈悲によってしか」行なわれない
ただ、シュトルツィウスの母親も伯爵夫人も最後まで支配を続けることができなかったわけです。その意味で、デッカーが最後に救済したのはマリーの人生ではなくて、ヴェーゼナーの老母の庇護欲である、というさらに嫌な見方もできるかなあ。白布を覆い被せてさ。。
by Sonnenfleck | 2008-05-07 07:08 | 演奏会聴き語り

我々も行進する

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軍人たちと同じく。

by Sonnenfleck | 2008-05-06 08:05 | 絵日記

名古屋フィル 第346回定演

【2008年4月19日(土)16:00~ 第346回定期/愛知県芸術劇場】
<ツァラトゥストラ1―大いなる質問…見えない答え…>
●アイヴズ:《答えのない質問》
●B. A. ツィンマーマン:Tp協奏曲《誰も知らない私の悩み》(日本初演)
→フィリップ・シャーツ(Tp)
●ハイドン:交響曲第22番変ホ長調 Hob.Ⅰ-22 《哲学者》
●R. シュトラウス:交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき》 op.30
⇒マックス・ポンマー/名古屋フィルハーモニー交響楽団


名フィル新シーズン。<ツァラトゥストラ>シリーズの幕開けです。
しかしながら、新しい親方・ティエリー・フィッシャーは19日の南西ドイツ放送響の演奏会を振っているために来日できず、代わって開幕指揮者として白羽の矢が立てられたのが、なんとマックス・ポンマーでした。実はアイスラーを録音したりしている凄爺さん。

シーズンを象徴するらしいアイヴズ《答えのない質問》
この日のコンマスは日比さんでも後藤さんでもなく、ゲストの植村くん。何かの布石かな。
さても冒頭の弦楽合奏、物凄くクリアな響きでした。2006年にフィッシャーが客演したときのブリテンに匹敵するくらい、冷たくて美しい響き。馬力に優れる名フィルですが、まずはこれで気合いがわかるというものです。
ソロのシャーツはステージに姿を現しません。下手のドアを全開にして、姿を見せないまま問いを投げかけ、木管アンサンブルがテキトーな答えをピロピロッと言い放つ。そして7回目の質問が空しく発せられたところでシャーツが静かに舞台へ進み出て、そのまま聴衆に拍手をさせる暇を与えずアタッカで《誰も知らない私の悩み》に移行してしまう。効果的な演出。

で、今回の定期で何がよかったですかと訊かれたら、ツィンマーマンと答える。
GWの新国《軍人たち》に先駆けて生ツィンマーマンが聴けたわけですが、、いやあ、、圧倒されました。アヴァンギャルドの語法とジャズの要素を一度ぐちゃぐちゃに混ぜ合わせたものを材料にして、カオスの設計に成功しているんですよ。嵐のような変拍子と苛烈な音塊の向こう側に、明らかに楽しい音楽世界が広がっているのですから、表層のゲンダイオンガク部分に引いてしまっては勿体ない!アドレナリン出まくり!ビュービュー!
シャーツは2種類のミュートを慌しく付け替えながらの超絶名人芸を披露、ポンマーは大振りなパフォーマンスで変拍子を振り分け、名フィルも「付いていくのにやっと」ではない余裕を感じさせる名演だったと思う。

案の定客席は見事に引いていて、拍手もあんまり大きくなかったですけど、こういう音楽の存在を知らしめることの重要さに思いが至る。フィッシャーはプログラムの中で「音楽はあまりにも長い間夢を見続けていた。今こそ、我らは覚醒を望む。我らは夢遊病者だった。今こそ、我らは日中の旅人となるのだ」というニーチェの言葉を引用してますが、もうちょっと敷衍すると、これこそ新シェフが「ツァラトゥストラ」シリーズでやりたいことの要約なんだろうなあという気がします。その意味でこの2作品が、まさに我々音楽的夢遊病者の強制的覚醒にふさわしい作品だったと感じられるのです。

前半最後にハイドンの《哲学者》(弦は6-6-4-3-2)。
このハイドンがまた、、ピリオド・アプローチだったんですから驚きです。凄いギャップ!
左手はフレーズの頭とお尻に最低限のヴィブラートを付けるだけ、弓の圧力やスピードで細かなアーティキュレーションを表現していて、なかなか堂に入ったものでした。これはポンマーの作戦勝ちでありましょう。第3楽章メヌエットでVc首席の太田氏がニヤリとしていたので、あのデフォルメされたリズムも指揮者の遊びかな。

後半の《ツァラトゥストラはかく語りき》は、残念ながらバテバテ。。この曲は派手な部分以外の静かな箇所が肝要だと思いますが、強奏がヤケクソになって暴発したり、弦のディヴィジがメタメタになったりしてちょっと聴くのが辛かったです。ポンマーも意外に派手好みな造形なので、余計静かな部分が目立つ…。でも前半あれだけのものを聴かせてもらったんですから、あまり大きな声で文句は言えません。
植村くんのソロ(と日比さんのアシスト)はとてもよかった。何と楽しそうに弾くことか。

ところでその1。後半の2ndテューバが元N響の多戸さんでした。どうりであの迫力。
ところでその2。オルガンはPAだったんでしょうか?ご存知の方教えてください。
ところでその3。ホワイエの4人体制はいくらなんでも多すぎだと思うんですが。。
ところでその4。山尾さんがプログラムに新連載!
by Sonnenfleck | 2008-04-20 00:18 | 演奏会聴き語り